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2024年更新
当院は1945年に、近隣の農業会と国民健康保険組合の共同出資により、地域住民の病院として「紀南病院」の名称で開設されました。1952年に西牟婁郡を中心とする町村で構成された一部事務組合(現在は田辺市、白浜町、上富田町、みなべ町の1市3町で構成される公立紀南病院組合)が運営することになりました。1958年には社会保険庁の管轄となり社会保険病院となりましたが、経営に関しては引き続き組合が経営委託を受け、2008年には社会保険庁の組織改革により、独立行政法人年金・保健福祉施設整理機構(RFO)に出資されました。そして2014年3月12日にRFOから、組合に譲渡され、名実ともに自治体病院となり、名称も「社会保険」の冠が外れ、元の「紀南病院」に戻りました。
現在当院は地域基幹病院として23診療科356床(感染病床4床)の体制で診療を行っております。地域がん診療連携拠点病院、地域周産期母子医療センター、第二種感染症指定医療機関、救急告示病院、和歌山県災害拠点病院、へき地医療拠点病院、洋上救急協力医療機関に指定されています。また、医療従事者の教育研修にも力を入れており、基幹型臨床研修指定病院(医科)、単独型臨床研修指定病院(歯科)などに指定されており、多くの学会の認定施設にもなっています。
紀南地域の産婦人科医療と徳島大学とのかかわりは1991年10月に旧国立田辺病院に大学から医師が派遣されたところから始まります。1992年7月に旧国立田辺病院と旧白浜温泉病院が統合されてできた国立南和歌山病院(現南和歌山医療センター)には常勤医3名が派遣されました(2000年4月から5名体制)。一方、当院の新病院移転(2005年5月)前の2004年4月に当院にも医師3名が派遣され(2003年に2名が始まり)、一時紀南地域には8名の産婦人科医が徳島大学から派遣されていました。その後、2006年10月南和歌山医療センターとの医師集約化が行われ、産婦人科医は5名体制になりました。2010年10月には4名体制になりましたが、2014年1月より和歌山県立医大から医師派遣を受け、2020年4月からは徳島大学2名、和医大3名の5名体制でした。2024年度より和医大からの派遣が2名に減員される報の衝撃は大きく、紀南地方の産婦人科医療崩壊の危機と認識をもった病院、和歌山県および田辺市は、協力して近畿圏と関東圏の諸大学に医師派遣要請に文字通り東奔西走し、やっとのことで本年(2024年)4月東京大学より2名(専攻医1名、専門医1名)の派遣を受けることができました。現在は徳島大学2名、 和医大2名、東京大学2名の6名体制で診療を行っています。
2007年1月から地域周産期母子医療センターの認定を受け紀南地域の周産期医療の拠点としての役割を果たしています。しかしながら、全国的な少子化の波が地方にも波及し、分娩数は年々減少しています。特に2020年に発生したコロナ禍などで一時的に帰省分娩を制限した影響が大きく、コロナ禍が明けても分娩数は増えず、2023年の分娩数は430件と集約化当時の約半数になっています。緊急母体搬送は9件であり、在胎26週以降の症例はNICUが満床でない限りほぼ全例受け入れています。
当院の周産期医療の特徴は何と言っても産婦人科医と小児科医との緊密な連携であり、毎週木曜日に行われる周産期カンファレンスでは切迫早産や合併症妊娠の症例提示を行って情報共有を図り、出生後の新生児の臨床経過のフィードバックを受けています。小児科は24時間体制で救急症例を受け入れており、分娩時の急変や帝王切開の立ち合いにも対応していたただいており、我々産婦人科医の心の支えになっていることは言うまでもありません。
2023年の手術件数は375件であり、2020年のコロナ禍による激減からは少し回復傾向にはありますが、分娩数の減少による帝王切開件数の減少のため全体で400件を下回るようになりました。しかしながら、帝王切開の件数を除いた手術件数は近年250件前後で推移し、中でも腹腔鏡下手術は120~140件を維持しています。良性付属器疾患は異所性妊娠も含め可能な限り腹腔鏡下手術で対応しており、良性子宮疾患に対しても腹腔鏡下子宮全摘術、腹腔鏡下筋腫核出術等の症例が増えています。2014年4月から日本産科婦人科内視鏡学会の認定研修施設として認定され、腹腔鏡下手術の技術認定医を目指す専攻医の先生の修練の場にもなります。悪性腫瘍の症例も多く、集学的治療はもちろん、緩和医療チームとの連携も良好です。
紀南病院は地域住民のための病院です。和歌山市から約100kmの遠隔地にあるロケーションにもかかわらず、各診療科とも充実し、病院スタッフの士気も旺盛です。我々も地域住民に信頼され、住民の方々が遠隔の都市部に行かずとも質の高い医療を受けられるように日々研鑽しています。