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研究の紹介

当研究室では、研究も積極的に行い、国内・国外の学会で発表を行っています。
近年、研究離れなどの問題も話題になっていますが、臨床での疑問を研究することで解明し、現状の医療に満足せず、継続的に研究を続けることが医学の貢献と考え日々取り組んでいます。

生殖・内分泌班

生殖・内分泌班の研究は、普段の臨床で得た疑問を基礎的手法によって解明することを目的としています。研究によって得られた技術や知識は疾患について複数の視点からアプローチすることを可能とし、臨床力の向上にもつながります。最初は回り道にも感じられる研究ですが、機会があれば躊躇せずチャレンジすることをお勧めします。

生殖機能と栄養代謝の相互作用に関する研究

やせやストレスが生殖機能の低下を引き起こす機序について検討しています。これまでに、これらの事象が生態防御反応の一環として起こっていること、および胎児期の低栄養やストレスが出生後長期にわたって生殖機能に影響を及ぼすことを明らかにしました。

多囊胞性卵巣症候群に関する研究

多囊胞性卵巣症候群は女性の5-10%に認められ、月経不順や多毛など多彩な症状をきたす疾患です。我々は日本人女性における多囊胞性卵巣症候群の特徴を明らかにし、本邦における診断基準の策定に貢献してきました。また、最近ではPCOSのモデル動物を用いて、より詳細な病態の解明を試みています。

PCOSモデルラットの卵巣所見 (Iwasa T et al, 2018, J ENdocrinol)

正常ラットでは黄体(CL)を多く認めるのに対して、PCOSラットでは囊胞(CF)を多く認める

周産期班

周産期におけるビタミンDの働きに関する研究

ビタミンDは骨の形成維持に大切な働きをもつビタミンですが、近年、日光を避ける習慣や食生活の変化などにより、ビタミンD不足の人が多いことが問題となっています。
ビタミンD不足は骨の問題だけにとどまらず、感染症や心血管疾患などとも関連し、周産期においては母体のみならず胎児の成長にまで悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
我々は妊娠中の母体や胎児におけるビタミンDの働きや、ビタミンD不足が引き起こす問題点について研究を続けています。

EC法を用いた妊産婦循環動態評価の研究

妊娠中、特に分娩前後の妊産婦では、心拍数や心拍出量などの循環動態に大きく、また急激な変化が現れます。
それらの変化に母体がうまく順応できない場合、肺水腫や心筋症などの重篤な合併症の発生にもつながりかねません。
我々はそのような妊産婦の循環動態の変化を、よりリアルタイムで非侵襲的に計測できるよう、電気的速度測定法(EC法)を用いた循環動態評価を導入し、研究を続けています。

超音波を用いた胎児心臓に関する研究

胎児超音波検査は近年急激な発展を遂げていますが、まだまだ妊娠中には発見できない胎児の構造異常や機能異常がたくさんあります。
我々は胎児超音波検査で胎児の様々な部位や血流などを詳細に観察することで、これまでわからなかった胎児の構造や機能を解明するための研究を続けています。
特に、Dual-Dopplerを用いた新しい胎児不整脈の評価方法を提唱するなど、胎児心疾患の評価に力を入れています。

腫瘍班

腫瘍班では婦人科悪性腫瘍の発癌や進展に関する研究を行っていますが、最近は子宮肉腫の新たな治療に関する研究、子宮頸癌における治療標的になりうる新たな分子の研究、臨床的には子宮頸癌の治療における筋肉量と治療成績の関係、卵巣癌患者におけるBRCAを含めたマルチジーンパネル検査などの研究を行っています。

  • 1.子宮肉腫に対する新たな治療法に関する研究として、プロスタグランジンJ2やレスベラトロールなどの新たな薬剤が肉腫細胞の増殖を抑制することを明らかにしており、現在動物実験を行って効果を確認しています。
  • 2.子宮頸癌における新たな治療戦略を検討しています。既存の抗癌剤治療で成績が頭打ちになっている現状を打破するために、癌の増殖、転移に関係する分子の検討を行い、将来の治療に発展できるような基礎研究をしています。
  • 3.癌治療においては患者さん側の因子も重要で同じ治療を行なっても合併症が強く出ると強い治療が行えません。それは治療成績にも関係してきます。年齢だけでは評価しにくい、患者側因子の評価法として筋肉量が注目されています。子宮頸癌で放射線治療を受ける患者さんの筋肉量と治療成績についての関係を研究しています。
  • 4.日本人の卵巣癌患者における遺伝子変化の研究をしています。乳がん、卵巣癌が多発すする原因のBRCA遺伝子の異常は日本人においても15%程度の患者さんから検出されますが、当院における検討でも同等の結果が明らかになっています。

女性医学班

子宮内膜症に関する研究

子宮内膜症は、20-40代の女性に多く発症し、疼痛などの症状を引き起こします。
女性のQOLに影響を与える病気であり、この病気の解明、治療の開発に取り組んでいます。

内膜症モデルマウスを用いた基礎研究

内膜症マウスモデルを作成し、内膜症の解明や新規治療について研究しています。

  • 内膜症とストレスの関係
    精神的ストレスと子宮周囲の脂肪細胞炎症の関係、さらには内膜症が進行する可能性があることについて研究しています。
  • 内膜症とアクチビンの関係
    卵胞液中に含まれるアクチビンが、内膜症の病状進行を促進する可能性について研究しています。
  • 新規治療についての検討
    内膜症進行のメカニズムを解明することで、新規治療について検討しています。

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